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山口地方裁判所 昭和53年(ワ)180号 判決 1980年2月28日

原告

湯面卓夫

ほか五名

被告

中司緑

ほか一名

主文

一  被告らは、連帯して、原告湯面卓夫に対し金七九万一、三〇〇円、その余の原告らに対し各金三〇万六、五〇〇円、及び、これらに対する昭和五三年七月五日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告らのその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用はこれを三分し、その一を原告らの、その余を被告らの、各連帯負担とする。

四  この判決は、原告ら勝訴の部分に限り、仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  原告ら

(一)  被告らは、各自、原告湯面卓夫に対し金九六万六、二三五円、その余の原告らに対し各金八二万六、二九四円、並びに、これらに対する昭和五三年七月五日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

(二)  訴訟費用は被告らの連帯負担とする。

(三)  仮執行宣言

二  被告ら

(一)  原告らの請求を棄却する。

(二)  訴訟費用は原告らの負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

(一)  本件事故

(1) 日時 昭和五三年七月四日午前七時一四分頃

(2) 場所 防府市大字奈美五二番三先県道上

(3) 加害車両 被告中司緑保有の普通乗用自動車

(4) 運転者 被告中司秀生

(5) 被害者 訴外亡湯面シヅヨ(以下シヅヨという)

(6) 事故の態様及び結果 前記日時場所において、シヅヨが東側から西側に向つて道路を横断していたところ、徳地町方面に進行していた被告中司秀生の運転する普通乗用自動車(以下加害車という)の前部右側がシヅヨに衝突し、その結果右頭頂部打撲及び同部位皮膚裂創、頭蓋底骨折、脳挫傷等の傷害を負い、七月一〇日午後三時四五分死亡した。

(二)  責任

(1) 被告中司緑は、加害車を保有し、本件事故当時、被告中司秀生に右加害車を使用させていたものであるから、自賠法三条によつて原告らの蒙つた損害を賠償する義務がある。

(2) 被告中司秀生は、本件事故当時、制限最高速度である時速四〇キロを著しく超過する時速六〇キロで進行していたが、自動車運転者としては、制限速度を守り、絶えず前方を注視し衝突事故の発生を防止すべき注意義務があるのに、これを怠つた過失によつて、本件事故が発生したものであるから、同被告は原告らが蒙つた損害を賠償する義務がある。

(三)  身分関係

原告湯面卓夫(以下原告卓夫という)は亡シヅヨの夫であり、その余の原告らは実子であつて、法定相続分に従つて同人の損害賠償請求権を相続した。

(四)  損害

1 亡シヅヨについて

(1) 治療費 金三七万七、三〇八円

(2) 附添料 金三万五、〇〇〇円

重傷危篤状態にあつたので、近親者二名が附添をし一名一日二、五〇〇円として七日分。

(3) 入院雑費 金四、二〇〇円

重傷のため一日六〇〇円の七日分。

(4) 休業損害 金二万三、二四〇円

農業と主婦業とで一日金三、三二〇円の七日分。

(5) 慰藉料 金六万三、〇〇〇円

重傷につき、一日金九、〇〇〇円の七日分。

(6) 逸失利益 金六八七万六、六六五円

内訳

(A) 農業兼主婦業分 金三〇六万八、〇七八円

亡シヅヨは、死亡当時六五歳(大正二年一月二〇日生)であつたが、主婦で家事と農業に従事していたので、なお六年間は就労可能であつたが、その間の得べかりし利益を失つた。その収入は、全国労働者の女子の六五歳の平均賃金相当の収入月額金九万九、六〇〇円を得ることができたから、生活費五〇%を控除して、事故当時の逸失利益を中間利息年五分を控除して新ホフマン方式により現価に換算すると金三〇六万八、〇七八円となる。

(B) 監査役の報酬分 金二〇七万六、四八〇円

亡シヅヨは、有限会社湯面建設の監査役であつたが同社は原告卓夫が代表取締役をしている同族会社であるから、監査役は終生留任する公算が大であつた。そこで、監査役の報酬一ケ月金三万円の割合による余命年数一六年間の得べかりし利益を失つた。

生活費五〇%を控除して、一六年間の得べかりし利益を中間利息年五分で控除して新ホフマン方式により現価に換算すると金二〇七万六、四八〇円となる。

(C) 国民年金損失分 金一七三万二、一〇七円

亡シヅヨは、死亡当時、国民年金に加入し、年額金三〇万二九六円の給付を受けていたが、余年一六年間の国民年金相当額の得べかりし利益を失つた。

生活費五〇%を控除して、一六年間の得べかりし利益を中間利息年五分を控除して新ホフマン方式により現価に換算すると金一七三万二、一〇七円となる。

(7) よつて、亡シヅヨの損害は、右(1)ないし(6)の合計金七三七万九、四一三円となる。

2 原告卓夫について

(1) 葬儀費用 金五〇万円

(2) 慰藉料 金二〇〇万円

亡シヅヨの夫としての慰藉料。

本件事故により妻を失い、甚しい精神的苦痛を受けているので、その慰藉料は金二〇〇万円が相当である。

(3) 弁護士費用 金八万八、〇〇〇円

3 その余の原告について

(1) 慰藉料 各金一二〇万円

本件事故により母を失い、甚しい精神的苦痛を受けているので、その慰藉料は各金一二〇万円が相当である。

(2) 弁護士費用 各金七万五、〇〇〇円

(五)  損益相殺

(1) 亡シヅヨが受けた損害金七三七万九、四一三円については、同人が昭和五三年七月一〇日死亡したので、法定相続分に従つて原告卓夫が金二四五万九、八〇四円、その余の原告らが各金九八万三、九二一円を相続した。

(2) 原告らは、自賠責保険から金一、〇七四万四、七〇八円を受領したので、相続分に従つた金額を原告らの損害額合計から控除し、また原告卓夫は被告中司秀生から葬儀費用金五〇万円を受領したので、これを控除する。

(六)  よつて、原告卓夫は被告らに対し各自右損害賠償金九六万六、二三五円、その余の原告らは被告らに対し各自各金八二万六、二九四円ならびにこれらに対する事故発生後である昭和五三年七月五日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する被告の答弁

(一)  請求原因(一)ないし(三)の事実は認める。

同(四)の事実は不知。

同(五)の事実のうち、(1)を争い、(2)を認める。なお、被告らは右自賠責保険金の外、香典として金一〇万円を原告卓夫に交付している。

よつて、同(六)を争う。

(二)  過失相殺

湯面シヅヨは道路横断に際し全く左右に注意を払わなかつたものであり、本件事故につき同人の過失も重大であるから過失相殺を求める。

(三)  損害について

(1) 原告らは亡シヅヨの農業兼主婦業分として一ケ月九万九、六〇〇円の収入ありと主張するが、シヅヨの夫原告卓夫が農業所得として四七万四、〇〇〇円余を申告しており、シヅヨの農業所得の申告はなく、年齢と農業の機械化から考えても実際に農業に従事したと考える余地は殆んどない。又一方、シヅヨは長男夫婦と同居しており、家事の手伝をする余地も殆んどない。

(2) 監査役の報酬分として一月三万円の逸失利益を主張するが、監査役は名のみの同族会社の税金免れのものであり、この事実は原告卓夫が会社の仕事をせずに給料として年間一九五万円を得ている事実から十分推定しうるし、実質は原告らのシヅヨへの扶養手当である(乙第一号証、甲第二〇号証)。他方、シヅヨ死亡後の収入分として計上していた金額は必然的に原告ら相続人の収入となるものであつて、監査役の報酬分を認容すれば原告らは二重に利得することになり不合理である。

(3) 国民年金損失分を請求するが、年金額からみて生活費を賄つて余剰がある筈がないのであつて請求の余地はない。

(4) 慰謝料額もシヅヨの年齢からみて高額にすぎる。

第三証拠〔略〕

理由

一  争いのない事実

請求原因(一)ないし(三)の事実(本件事故、責任、及び身分関係)は、当事者間に争いがないので、被告らは原告らに対し後記損害を賠償する責任がある。

二  過失相殺について

成立に争いのない甲第八ないし第一一号証、第一四号証、及び被告中司秀生本人尋問の結果によれば、本件事故現場は防府市新橋町から佐渡郡徳地町方面に南北に通ずる幅員六・八メートル、その両側端には幅一五センチの白ペイントで外側線が表示され、道路中央部には黄ペイントでセンターラインが引かれたアスフアルト舗装の県道(防府―阿東線)上で、東西に走る幅員八〇センチの畦道とほぼ直角に交わる場所で、附近の県道は見通しのよい直線道路でその両側には水田、畑が接して広がり民家が点在する農村地帯であり、事故現場の西側約五〇メートルの位置にシヅヨの住家があるが、附近の県道には横断歩道や歩道橋はない、被告秀生は加害車(五一年型トヨタカリーナ二、〇〇〇CC、車長四・二二メートル、車幅一・五九メートル、車高一・三三メートル)を運転して北進中事故現場に差しかかり、前方約一五〇メートルの所を対向してくる普通乗用自動車に気を取られ、前方注視不十分なまま漫然と時速約六〇キロメートル(制限時速四〇キロメートル)で進行したため、折から進路前方を右から左に横断中のシヅヨを早期に発見できず、前方約二四・七メートルに接近して初めてセンターライン附近のシヅヨを発見し急制動の措置をとるも及ばず自車右前部フエンダー附近に同女を衝突させたこと、被告秀生は通勤のため右国道を利用しているため現場付近の道路状況は良く知つていたこと、一方シヅヨは朝の農作業を終えて帰宅のため前記国道を東より西に小走りで横断しようとしてセンターラインより西側一・五メートルの地点において、左腰付近に加害車の前記右フエンダーが衝突したことが認められ、これに反する証拠はない。

右認定の事実によれば亡シヅヨにも国道横断にあたり左右の安全確認が必ずしも十分でなかつたことがうかがわれ、過失の存在を否定することはできないけれども、被告秀生の過失と右シヅヨの過失の度合いを対比し、また本件実損害や逸失利益の損害額及び自賠責保険の控除額等を総合考慮すると、シヅヨの過失を原告らの損害額の算定にあたり斟酌してあえて減額する必要があるとは認められない。

三  損害

(一)  亡シヅヨの損害

(1)  治療費 三七万七、三〇八円

(2)  付添料 三万五、〇〇〇円

(3)  入院雑費 四、二〇〇円

成立に争いのない甲第一五ないし第一七号証と原告湯面卓夫本人尋問の結果によれば、原告ら主張のとおり右(1)ないし(3)の積極損害の項目を認めることができる。

(4)  休業損害 二万四、一一六円

被告らは、シヅヨが農業及び家事労働に従事したと考える余地は殆んどないと主張する。

しかし、成立に争いのない甲第一、第一二、第一三、第一五、第一六号証と原告湯面卓夫本人尋問の結果によれば、原告卓夫は田六反五畝、畑約一反を所有していたが、シヅヨ(大正二年一月二〇日生、高等小学校卒)は夫の原告卓夫及び長男の原告尚典夫婦と協同して農業経営にあたり、農業用機械の使用は右長男その他の男手でなされていたものの、田の苗代作り、水廻り、及び畑の野菜作りなどの農作業に従事し、現に事故当日も朝五時半に起床し県道を渡つて約三〇〇メートル離れた田圃の水加減を見分し、或いは畑の野菜への水やりに赴いていたこと、シヅヨは夫卓夫及び長男の家族と同居していたが昼・夕食の食事の準備や夫卓夫の洗濯その他身の廻りの世話などの家事労働にも従事していたことが認められ、これに反する証拠はない。

右認定事実によれば、シヅヨは農業兼家事労働に従事していた兼業主婦であつたと認めるのが相当である。

そこで、シヅヨの収入は、現実の形として存在していないが、主婦の収入額の認定方法に従い、昭和五二年「賃金センサス」第一巻第一表全国性別、学歴別、年齢階級別平均給与額表の女子労働者(小学・新中卒)の年間給与額によりシヅヨの年収を一二五万七、五〇〇円と認めるのが相当である。

従つて、シヅヨの本件事故から死亡までの入院期間中の七日間の休業損害は二万四一一六円となる。

125万7,500円×7/365=24,116円

(5)  慰謝料

原告らは、重傷を負つたシヅヨの死亡前七日間の傷害慰藉料六万三、〇〇〇円を相続したと主張する。

成立に争いのない甲第一二、第一五、第一六号証、原告湯面卓夫本人尋問の結果によれば、シヅヨは本件事故により意識を失い県立中央病院に搬入され人工呼吸器を装着して治療を受けていたが、一言も発することなく意識が回復しないまま七日目に死亡したことが認められる。

ところで、受傷後死亡の場合における死者の傷害慰藉料については、死亡慰藉料と同様一身専属的であつて、死亡までの間に支払約束、訴提起等一身専属性からの解放が認められるような特別の事情がない限り、相続は否定されるべきであると解すべきであるから、右認定事実の下において傷害慰藉料を相続したとする原告らの主張は採用できない。

(6)  逸失利益 三二二万八、〇〇二円

(A) 前記認定の諸事情によれば、死亡当時六五歳であつたシヅヨは、本件事故に因り死亡していなければ、少なくともあと六年間は就労可能で前記収入を得られたであろうこと、そして同女は右収入のうち五〇%を自己の生活費等に費消したであろうことが推認されるから、同女の逸失利益の死亡時の現価はホフマン方式により金三二二万八、〇〇二円と算定される。

125万7,500円×0.5×5,134=322万8,002円

(B) 監査役の報酬分について

原告らは、監査役の報酬分として金二〇七万六、四八〇円を逸失利益に算入する。

原告湯面卓夫本人尋問の結果及びこれにより真正に成立したものと認められる甲第一八ないし第二〇号証によれば、シヅヨは生前夫である原告卓夫が代表取締役をしている有限会社湯面建設の監査役の地位にあつてその報酬を得ていたことが認められるが、他方、右会社は原告らのみからなるいわゆる同族会社であつて、シヅヨは単に名目的な役員であり実際に監査役の業務を担当しておらず、シヅヨ死亡後は四男の原告宣允が監査役となつたことが認められる。

右認定事実によれば、その報酬は労働の対価としての実質をもたず逸失利益として評価できないので、原告らの主張は失当である。

(C) 国民年金損失分について

成立に争いのない甲第二一、第二二号証の各一、二、及び原告湯面卓夫本人尋問の結果によると、シヅヨは六五歳となつた昭和五三年一月二〇日から老齢年金の受給権を取得し、同年二月から年額二八万七、五〇〇円(のち改訂され三〇万〇、二九六円)の割合で年金の支給を受けていたことが認められるが、老齢年金は、生活保障的性格の強い年金であつて、給付を受ける権利は他に譲渡することが禁止され(国民年金法二四条)、受給権者の死亡と共に消滅する(同法二九条、二九条の六)ので、その限りにおいて一身専属的な性質を帯び相続性はない。

従つて、シヅヨの死亡により老齢年金の支給を受けられなくなつたことをもつて得べかりし利益の喪失とし、これを損害賠償の対象とする原告らの主張は、失当である(東京地判昭和四六・一〇・三〇判例タイムス〔編注:原文ママ 「判例タイムズ」と思われる〕二七二号六二頁、広島高裁松江支部昭和四七・七・三一判決、判例時報六八〇号四八頁参照)。

(7)  原告らの相続

亡シヅヨの損害額は、右(1)ないし(4)及び(6)の合計三六六万八、六二六円となるところ、原告卓夫は夫として三分の一、その余の原告らは子として各一五分の二の各割合でこれを相続した。従つて、原告卓夫の相続金額は一二二万二、八七五円、その余の原告らの相続金額は各四八万九、一五〇円となる。

(二)  原告らの損害

(1)  葬儀費用 五〇万円

成立に争いのない甲第一一号証、原告湯面卓夫本人尋問の結果及びこれにより真正に成立したものと認められる甲第二三、第二四号証によれば、原告卓夫は亡妻シヅヨの葬儀関係費用として合計一二二万五、一八六円を支出したことが認められるが、同女の年齢、社会的地位、家族構成及び被告秀生は葬儀参列時葬儀費用に充当される目的で金五〇万円を原告卓夫に交付したこと(交付の事実は当事者間に争いがない)その他諸般の事情を総合すると、右支出のうち五〇万円が本件事故と相当因果関係ある損害(葬儀関係費)と認める。

(2)  慰藉料 合計九〇〇万円

成立に争いのない甲第一ないし第七号証、第一二、第一三、第一五、第一六号証に原告湯面卓夫本人尋問の結果によれば、原告卓夫はシヅヨと昭和二年二月一二日婚姻してその間に原告ら五名(四男一女)を儲け、本件事故当時長男の原告尚典夫婦と同居して共に農業兼建設業を営み幸福な家庭生活を送つていたのに妻を奪われたこと、シヅヨは前記認定のとおり本件事故当時年齢六五歳であつたがなお元気に農作業や家事労働に従事し、一家の柱とはいえないまでも、家庭内で重要な地位を占めていたこと、前記認定のとおりシヅヨは本件事故後人工呼吸器により生命を維持していたが、原告らは医師より意識回復の望みもないと告げられて止むなく右装置を外すことに同意し、シヅヨは七日目に死亡するに至つたこと、原告卓夫は、建設業を長男らに譲り、シヅヨと共にうどん屋を開業し余世を送るべく準備していたが、本件事故により妻に先立たれその意欲を失つたこと、その余の原告らは皆結婚して経済的には独立していたが、防府市大字奈美の同じ部落内に居住して母子間の交流もあつたのに本件事故により母を奪われ甚大な精神的苦痛をうけたことが認められ、その他諸般の事情に鑑みれば、原告らの精神的苦痛を慰藉すべき金額としては、原告卓夫三〇〇万円、その余の原告ら各一二〇万円が相当である。

(三)  損益相殺

原告らが自賠責保険金から金一〇七四万四、七〇八円を受領し、また、原告卓夫は被告中司秀生から葬儀費用五〇万円を受領したことは、当事者間に争いがない。

よつて、自賠責保険金は原告らの各相続分に応じてその損害額から控除し、葬儀費用は原告卓夫の損害額から控除して残額を求めると、原告卓夫は六四万一、三〇〇円、その余の原告らは各二五万六、五〇〇円(一〇〇円未満切捨)となる。

122万2,875円+50万円+300万円-(358万1,569円+50万円)=641,306円

48万9,150円+120万円-143万2,627円=25万6,523円

なお、被告らは原告卓夫に対し香典として金一〇万円を交付したと主張し、原告湯面卓夫本人尋問の結果によれば、右主張事実が認められるが、香典として儀礼的金額の範囲内であり、被告中司秀生本人尋問の結果によれば同被告は遺族に対する贈与の意思で交付したことが認められ、損害填補の性質を有しないと解されるから、これは控除しない。

(四)  弁護士費用 合計四〇万円

原告湯面卓夫本人尋問の結果に弁論の全趣旨によれば、被告らは原告らに対してその蒙つた損害を任意に支払わなかつたため、原告らは山口県弁護士会所属弁護士斎藤義信に対し本訴の提起と追行方を委任し報酬支払契約を約していることが認められるところ、本件訴訟の経過及び認容額等諸般の事情を勘案し被告らに賠償を求めうる金額は原告卓夫金一五万円、その余の原告ら各金五万円とするのが相当である。

四  結論

以上によれば、被告らは連帯して原告卓夫に対し金七九万一、三〇〇円、その余の原告らに対し各金三〇万六、五〇〇円、及びこれらに対する本件不法行為後である昭和五三年七月五日から支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払義務があるから、原告らの本訴請求は右の限度で認容し、その余の請求を失当として棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条、九三条、仮執行の宣言につき同法一九六条を各適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 三村健治)

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